▲TOPに戻る


苫小牧・室蘭カレーラーメンの歴史




《要約》
1965 創業者の高橋一郎氏が、苫小牧で食堂を開設、カレーラーメンを考案
1966 or 67 岩見沢に移転、岩見沢駅前に「味の大王」を開店
1971 or 72  苫小牧に移転して、『ラーメン大王 総本店』となる

1971/7 小柳弘氏が 岩見沢市の「味の大王」で1ヶ月の修行
1971/9 室蘭市輪西町で開業
1972 市内中央町に移転して、『ラーメン大王 室蘭本店』となる


《全文》

カレーラーメン誕生50年 [北海道新聞 2015/2/20]

 受け継がれる「大王」流
 苫小牧で産声 室蘭、美唄にも


 室蘭、苫小牧の胆振管内2大都市が、競い合うように売り出すご当地グルメ「カレーラーメン」。両市ともそれぞれ20以上の店が提供する過熱ぶりだが、関係者によると、その源流は同じとされる。苫小牧の老舗店「味の大王」だ。ちょうど50年前に生まれた個性派メニューは、人と人との出会いから岩見沢を経て、室蘭に広がった数奇な「生い立ち」を持つ。半世紀にわたる歴史を追った。

 「大王」流のカレーラーメンの神髄は果物や野菜、スパイスを原料にしたペースト(もとだれ)だ。豚骨系スープで合わせると、とろみが出て縮れ麺とよく絡む。具材はワカメとチャーシュー、ネギが定番。室蘭、苫小牧で普及したカレーラーメンの原型とされる。
 誕生したのは50年前の1965年春。苫小牧市の繁華街大町にあった「味の大王」=現・味の大王総本店(同市植苗)=の前身となる食堂で、創業者の高橋一郎さん(80)が「老若男女に人気のカレーとラーメンを組み合わせたい」と考案した。しかし、高橋さんの長男浩一さん(47)によると、「邪道だ」などといわれ、あまり売れなかったという。

古巣に再移転
 高橋さんは66年か68年ごろ、親戚を頼って岩見沢に移転、岩見沢駅前に「味の大王」を開店する。そこで、同店の味にほれ込んだのが、後に「味の大王」を室蘭で開く常連客小柳弘さん(73)だった。一念発起してバス会社を辞め、71年7月から1カ月間、高橋さんのもとで修業した。
 「教えてもらったレシピをびっしりメモに書いた」と小柳さん。人気のみそラーメンの製法や、秘伝のカレーペースト作りを習得したという。同年9月、姉が住む室蘭市輪西町で開業。翌72年秋には市中央町で現在の「味の大王室蘭本店」が開店し、小柳さんの弟の富資(ゆたか)さん(70)とともに切り盛りした。一方、高橋さんも71年か72年ごろ、岩見沢の店を閉め、人口が急増していた古巣に再移転。やがて「総本店」を名乗る。

とろみとコク
 「味の大王」は70年代前半、髙橋さん経営の総本店(苫小牧)、小柳さん経営の室蘭本店の二つの流れに分かれた。双方のマチで人気を博し、弟子たちが支店をさらに増やしていく。個性派メニューだったカレー味も次第にラーメン好きの心をつかみ、両地域で提供店が増えていった。
 総本店2代目社長の浩一さんは「当時は今より甘じょっぱく、お酒を飲んだ後に食べたくなる味だった」と話す。現在はとろみとコクの基本を守りながら、塩分を減らして提供する。
 一方、室蘭本店の富資さんはとろみを増し、90年前後に自家製麺に乗り出した。「カレーがみそ味より人気になったのは最近のこと」と話す。
 一つのきっかけは2006年、室蘭と近郊の飲食店で結成した「室蘭カレーラーメンの会」の活動だ。メディアが一斉に取り上げ、休日の室蘭本店は行列ができる人気になった。苫小牧でも13年、提供店が町おこし運動をスタートさせた。
 小柳弘さんは2005年には、妻京子さん(67)の故郷・美唄市に「味の大王」を開店した。同市茶志内町の国道12号沿いに立つ赤いのぼりが目印。南茶志内神社の社殿のすぐ隣に建つ。「カレーラーメン」(700円)は客の9割が注文する人気メニュー。スープはとろみの少ないサラサラ系だが、後からじわじわとスパイスが効いてくる。小柳さんは「基本的には親方(高橋一郎さん)のレシピを今も忠実に守ってるよ」と笑顔で話した。


《知名度アップへ各店連携》
■室蘭カレーラーメンの会
室蘭のカレーラーメンの知名度を一躍高めたのが、2006年に発足した「室蘭カレーラーメンの会」(小柳富資会長)だ。「札幌のみそ、函館の塩、旭川のしょうゆに次ぐ『北海道第四の味』を目指す」と室蘭、登別、伊達の21店で発足。食べ歩き地図、マスコットキャラ「めんばる君」などでPRし、08年に日清食品(東京)と即席めんも開発した(13年製造終了)。
加盟する店のカレーラーメンの個性もさまざまだ。同市絵鞆町の「ファミリーレストラン若鶴」はトンカツを載せた一品が看板メニュー(1020円)-写真-。20年ほど前、常連客の要望で始めた。若杉剛社長(40)は「結構なボリュームですが、お子さんもお年寄りも完食します」。
■とまこまいカレーラーメン振興局
「50年も市民に愛されているのだから、もっとPRしないともったいない」と、2013年、苫小牧のラーメン店主らが「とまこまいカレーラーメン振興局」を結成。「発祥の地」の誇りを胸にカレーラーメンのブランド化に乗り出した。
苫小牧など東胆振の提供店一覧マップを作ったり、道の駅で食べ比ぺの催しを開いたりし、現在は40店を掲載する第3弾のマップを制作中だ。将来的には室蘭と連携、胆振版の制作も構想している。
「振興局長」を務める田中康明さん(56)が営む「ふたば家」(木場町)では、みそカレーラーメン(750円)=写真=も人気。田中さんは「独自ブレンドのスパイスとみそが良く合います」とPRする。



戻る レポートの一覧に戻る